• 2024年度数学科リレー講座「アーベルの定理200年記念講座」5日目

2024年度数学科リレー講座「アーベルの定理200年記念講座」5日目

2024.09.02

  • KSプロジェクト
  • 数学科

5日目前半は、ルフィニの定理・アーベルの定理を理解するために必要な対称有理式についての定理と体という集合について学びました。対称有理式については,任意の偶置換に対して不変な有理式は対称有理式と差積で表すことができることを具体例を通して確認し,これがルフィニの定理の重要なエッセンスになることを紹介しました。また,体を通じて方程式が代数的に解けるとはどういうことなのかを理解することを目標に進め,後半の5次以上の方程式は解の公式が存在しないことの証明へバトンタッチしました。

5日目後半は,1の累乗根,ラグランジュの分解式,アーベルとルフィニの定理「5次以上の方程式に根の公式は存在しない。」を説明しました。方程式の係数(基本対称式)から根の公式を作るときに,べき根をとることによって対称性が崩れます。最初は判別式の平方根(差積)を加えた式の集合を考えると,奇置換によって正負が変わる式となります。次に,3,4次の場合はある3乗根を加えた式を考えて偶置換の対称性を崩せるのですが,「5次以上の偶置換の場合は,5個の根を巡回置換で5回うつしても不変になるので,そのような3乗根を集合の外に取ることはできない。」というのがルフィニの主張でした。アーベルはルフィニの証明の中の足りない大事な部分を埋める補題を,今から200年前の1824年に証明しました。

 

以下は,生徒たちの感想です。

・4日目で「集合を拡大していくことで解が得られるかどうか判定する」という証明のざっくりとした方針が頭に入っていたので,今日の前半の内容はすんなり理解することができた。体にべき根を加えていくという発想がとても面白いと感じた。べき根をとるという扱いにくい操作をうまく扱えることがすごいと思った。また,前回習った対称式や差積などの概念が5日目になってたくさん出てきた。4日目時点で何に使うかあまり理解できていなかったので感動した。
・2次方程式の解の公式や判別式をあたり前のように使ってきたが,それを導き出す過程を少し見たことで,公式の偉大さをあらためて実感した。
・5次方程式の解き方や,アーベルの定理が分かった。偶置換を使うことで証明できることが分かった。
・sin,cosを使った複素数の積がとっても面白いと思った。複素数平面は便利そうで考えやすそうなので,今度勉強してみようと思った。